投与前チェックリスト


投与前に行う問診・検査

本剤の投与開始前に以下の項目について問診・検査を実施し、患者の状態を確認してください。

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結核スクリーニング検査

本剤投与前に結核のスクリーニング検査を実施し(下図をご参照ください)、以下に該当する患者には、本剤投与前に抗結核薬を投与してください。

  • 胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
  • 結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
  • インターフェロンγ遊離試験(IGRA)やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
  • 結核患者との濃厚接触歴を有する患者

結核感染が疑われる場合は、結核診療経験のある医師に相談してください。

結核を疑う症状(持続する咳、発熱等)が発現した場合には速やかに主治医に連絡するよう、患者にご指導ください。なお、結核の活動性が確認された場合は本剤を投与せず、結核の治療を優先してください。

参考 生物学的製剤投与時の結核予防対策

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日本呼吸器学会 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き作成委員会 編:生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き

http://fa.jrs.or.jp/guidelines/guidance_respiratory-disease.pdf(最終アクセス日:2017年8月25日)

B型肝炎ウイルス検査

本剤投与前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認してください(下図をご参照ください)。B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者においては、HBV DNAのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意し、HBV DNAが検出された場合は肝臓専門医に相談してください。

免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン

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補足:血液悪性疾患に対する強力な化学療法中あるいは終了後に、HBs抗原陽性あるいはHBs抗原陰性例の一部においてHBV再活性化によりB型肝炎が発症し、その中には劇症化する症例があり、注意が必要である。また、血液悪性疾患または固形癌に対する通常の化学療法およびリウマチ性疾患・膠原病などの自己免疫疾患に対する免疫抑制療法においてもHBV再活性化のリスクを考慮して対応する必要がある。通常の化学療法および免疫抑制療法においては、HBV再活性化、肝炎の発症、劇症化の頻度は明らかでなく、ガイドラインに関するエビデンスは十分ではない。また、核酸アナログ投与による劇症化予防効果を完全に保証するものではない。

注1)免疫抑制・化学療法前に、HBVキャリア及び既往感染者をスクリーニングする。まずHBs抗原を測定して、HBVキャリアかどうか確認する。HBs抗原陰性の場合には、HBc抗体及びHBs抗体を測定して、既往感染者かどうか確認する。HBs抗原・HBc抗体及びHBs抗体の測定は、高感度の測定法を用いて検査することが望ましい。また、HBs抗体単独陽性(HBs抗原陰性かつHBc抗体陰性)例においても、HBV再活性化は報告されており、ワクチン接種歴が明らかである場合を除き、ガイドラインに従った対応が望ましい。

注2)HBs抗原陽性例は肝臓専門医にコンサルトすること。また、すべての症例において核酸アナログの投与開始ならびに終了にあたって肝臓専門医にコンサルトするのが望ましい。

注3)初回化学療法開始時にHBc抗体、HBs抗体未測定の再治療例及び既に免疫抑制療法が開始されている例では、抗体価が低下している場合があり、HBV DNA定量検査などによる精査が望ましい。

注4)既往感染者の場合は、リアルタイムPCR法によりHBV DNAをスクリーニングする。

注5)
a. リツキシマブ(±ステロイド)、フルダラビンを用いる化学療法及び造血幹細胞移植例:既往感染者からのHBV再活性化の高リスクであり、注意が必要である。治療中及び治療終了後少なくとも12ヵ月の間、HBV DNAを月1回モニタリングする。造血幹細胞移植例は、移植後長期間のモニタリングが必要である。
b. 通常の化学療法及び免疫作用を有する分子標的治療薬を併用する場合:頻度は少ないながら、HBV再活性化のリスクがある。HBV DNA量のモニタリングは1~3ヵ月ごとを目安とし、治療内容を考慮して間隔及び期間を検討する。血液悪性疾患においては慎重な対応が望ましい。
c. 副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、免疫抑制作用あるいは免疫修飾作用を有する分子標的治療薬による免疫抑制療法:HBV再活性化のリスクがある。免疫抑制療法では、治療開始後及び治療内容の変更後(中止を含む)少なくとも6ヵ月間は、月1回のHBV DNA量のモニタリングが望ましい。なお、6ヵ月以降は3ヵ月ごとのHBV DNA量測定を推奨するが、治療内容に応じて高感度HBs抗原測定(感度0.005 IU/mL)で代用することを考慮する。

注6)免疫抑制・化学療法を開始する前、できるだけ早期に核酸アナログ投与を開始する。ことに、ウイルス量が多いHBs抗原陽性例においては、核酸アナログ予防投与中であっても劇症肝炎による死亡例が報告されており、免疫抑制・化学療法を開始する前にウイルス量を低下させておくことが望ましい。

注7)免疫抑制・化学療法中あるいは治療終了後に、HBV DNA量が20 IU/mL(1.3 LogIU/mL)以上になった時点で直ちに核酸アナログ投与を開始する(20 IU/mL未満陽性の場合は、別のポイントでの再検査を推奨する)。また、高感度HBs抗原モニタリングにおいて1 IU/mL未満陽性(低値陽性)の場合は、HBV DNAを追加測定して20 IU/mL以上であることを確認した上で核酸アナログ投与を開始する。免疫抑制・化学療法中の場合、免疫抑制薬や免疫抑制作用のある抗腫瘍薬は直ちに投与を中止するのではなく、対応を肝臓専門医と相談する。

注8)核酸アナログは薬剤耐性の少ないETV、TDF、TAFの使用を推奨する。

注9)下記の①か②の条件を満たす場合には核酸アナログ投与の終了が可能であるが、その決定については肝臓専門医と相談した上で行う。
①スクリーニング時にHBs抗原陽性だった症例では、B型慢性肝炎における核酸アナログ投与終了基準を満たしていること。
②スクリーニング時にHBc抗体陽性またはHBs抗体陽性だった症例では、
(1) 免疫抑制・化学療法終了後、少なくとも12ヵ月間は投与を継続すること。
(2) この継続期間中にALT(GPT)が正常化していること(ただしHBV以外にALT異常の原因がある場合は除く)。
(3) この継続期間中にHBV DNAが持続陰性化していること。
(4) HBs抗原及びHBコア関連抗原も持続陰性化することが望ましい。

注10)核酸アナログ投与終了後少なくとも12ヵ月間は、HBV DNAモニタリングを含めて厳重に経過観察する。経過観察方法は各核酸アナログの使用上の注意に基づく。経過観察中にHBV DNA量が20 IU/mL(1.3 LogIU/mL)以上になった時点で直ちに投与を再開する。

日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編:B型肝炎治療ガイドライン(第3版).2017年8月,p.78-80

https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b(最終アクセス日:2017年8月25日)

使用上の注意点

(添付文書より抜粋)

【用法・用量】

通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

1. 本剤4mg 1日1回投与で治療効果が認められた際には、本剤2mg 1日1回投与への減量を検討すること。[「臨床成績」の項参照]

2. 中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。[「慎重投与」及び「薬物動態」の項参照]

腎機能障害の程度 推算糸球体ろ過量(eGFR:mL/分/1.73m2) 投与量
正常又は軽度 eGFR≧60 4mgを1日1回投与
中等度 30≦eGFR<60 2mgを1日1回投与
重度 eGFR<30 投与しない

3. 免疫抑制作用が増強されると感染症のリスクが増加することが予想されるので、本剤と抗リウマチ生物製剤や他のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤との併用はしないこと。本剤とこれらの薬剤との併用経験はない。

【使用上の注意】

2. 重要な基本的注意

(2) 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として本剤投与前に適切な抗結核薬を投与すること。

1) 胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者

2) 結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者

3) インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者

4) 結核患者との濃厚接触歴を有する患者

また、本剤投与中も胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること。なお、結核の活動性が確認された場合は本剤を投与しないこと。

(7)抗リウマチ生物製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs 抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者においては、肝機能検査値やHBV DNAのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。なお、活動性B型肝炎もしくはC型肝炎の患者は臨床試験では除外された。

3. 相互作用

本剤の主たる排泄経路は腎であり、P-糖タンパク質(P-gp)、乳癌耐性タンパク(BCRP)、有機アニオントランスポーター(OAT)3、及びmultidrug and toxin extrusion(MATE)タンパク2-K(MATE2-K)トランスポーターの基質である。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等

プロベネシド

臨床症状・措置方法

本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。本剤とプロベネシド併用時に本剤のAUCが2倍に増加した。プロベネシドとの併用時には本剤を2 mg 1日1回に減量するなど用量に注意すること。[「薬物動態」の項参照]

機序・危険因子

OAT3を阻害することにより本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

5. 高齢者への投与

高齢者において、重篤な有害事象の発現率の上昇が認められている。また、本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下している場合が多いので、用量に留意して、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。[「薬物動態」の項参照]

6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与

(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、本剤を投与しないこと。[動物実験では催奇形性が報告されており、ヒトに本剤を投与したときの血漿中濃度と比較したとき、催奇形性に関する安全域はラット及びウサギでそれぞれ2.3倍及び6.3 倍であった。また、ラットで受胎能、胎児の発達、出生児の体重への影響が報告されている。雌ラットの受胎能及び初期胚発生に関する安全域は4.1倍、出生前及び出生後の発生に関する安全域は1.8倍であった1)。]

(2) 本剤投与中は授乳を中止させること。[ラットで乳汁中へ移行することが報告されている。]

1)バリシチニブの生殖発生毒性試験